恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄の表情から笑みが消え、神妙な顔で真琴を見つめ返す。
何と言って真琴を安心させるべきか考えていたが、思考が硬直して、何も真琴に語りかけられなかった。
真琴は古庄の視線から目を逸らし足元を見つめ、もっと苦しそうに眉間に皺を寄せると、一歩踏み出した。
手にあったプリントも足元に落としながら、一歩一歩古庄のもとに近づいてくる。
そして、古庄の側まで来て目の前に立つと、真琴は思い切ってその胸に飛び込み、背中に回した腕にギュッと力を込めた。
「真琴…?」
古庄が戸惑って、そう言葉をかけると、真琴は古庄の胸に顔をうずめたまま、その一言を絞り出した。
「……あなたが、好きです……」
真琴がつぶやいたその短い一言は、一瞬で古庄の心を貫いた。
ついたった今、佳音からも聞かされたその言葉は、全く違う意味と響きで古庄の全てを包み込んだ。
この言いようのない切なさと、途方もない愛しさを伴った感覚は、今までに経験したことがない――。
それを自覚して古庄は、真琴からその言葉を初めて告げられたことに気が付いた。