恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
真琴が顔を上げて、涙を湛えた目で古庄の目を捉える。
「あなたのことが、好きです……」
もう一度その言葉を発すると同時に、涙が零れ落ちた。
本当ならこの言葉は、二人でいることの幸せを感じながら、古庄に告げたかった。
こんな風に嫉妬に駆られて伝えるべきことではないと、真琴も十分に解っている。
だけど、佳音のあのほとばしるような想いを知ってしまって、真琴は我を忘れた。
今この瞬間に、古庄には知っておいてもらいたかった。
あの佳音の激しい想いよりも…、世界中の誰よりも、一番に古庄を愛し恋い慕っているのは、自分なのだと――。
そして、古庄が愛しているのは佳音ではなく、世界中でたった一人、自分だけなのだと確かめたかった。
抱きしめてくれている古庄の腕に、いっそうの力が込められているのは分っていたが、それだけでは足りなかった。
「……キスしてください……」
黙ったままでいる古庄の、戸惑いと切なさを宿している目を見上げて、真琴は密やかにそれを求めた。