恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



職員室へ戻ると、相変わらず古庄の机の周りには、女子生徒たちが数人待ち構えている。
しかし、古庄は彼女たちをほとんど無視するように、財布や自転車の鍵を携行すると、すぐに職員室を後にした。

真琴も手早く机の上を片付けると、荷物を抱え古庄の後に続いた。明日の授業で準備がまた不十分なところもあったけれども、今は古庄の側にいることの方が大事だった。



――…あれだけじゃ、まだ足りない…!



「好きです」と言う一言だけでは、真琴の中にある想いの全ては表現しきれない。
もっと深くもっと切実で、計り知れないほどもっと大きなものだと、古庄に伝えたかった。

一度堰を切られた想いの言葉たちは、一気に押し寄せてきて、容赦なく真琴を急き立てた。


逸る心をなだめながら、努めて冷静に車の運転をし、真琴は自分のアパートへとたどり着いた。
大きくなりつつあるお腹も物ともせず、階段を駆け上がり自分の部屋のドアノブに手をかけると、すでに鍵が開いている。
窓から入ってくる街灯の光に照らされた室内には、古庄が大きく肩で息をしながら、居間のまん中で仁王立ちしていた。


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