恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
今までも、十分に想いは通じ合っていたつもりだった。
けれども、真琴から告げられたたった一言で、まだこんなにも愛しい想いが溢れてくる。
その想いを表すように、古庄は抱きしめたその手で、真琴の滑らかな背中を撫でさすった。
「……『好きです』って言って、あなたを自分から追いかけるのが怖かったんです」
真琴のその言葉を聞いて、古庄の手の動きが止まる。天井から視線を移して、腕の中の真琴を見つめた。
自分の本当の気持ちをやっと打ち明ける真琴は、緊張して感極まり、震えはじめる。
「怖い?…どうして…?」
自分は決して怖い男ではないと思う。
真琴にだけはできるだけ優しくしてきたつもりなのに、どうして真琴がそう思うのか、古庄には解らなかった。
真琴は息を呑みこんで、自分の想いの丈をどう言葉で表現すべきなのか考えて、思い切って口を開く。
「……追いかけても、追いかけても。あなたは到底手の届く人じゃない、って…」
そう言葉を絞り出すと同時に、真琴の目からは堪えきれない涙が零れ落ちた。
古庄は、真琴の言ったことの意味を考えながら、真琴を見つめた。
好きになればなるほど、怖くなる…。
それほど、真琴にとって自分は、圧倒的で驚異的だったのだ。