恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄家
古庄が1時間目の授業に赴いた時、佳音は自分の席に静かに座っていた。
古庄の方へ顔も向けてくれないので、その表情さえ読み取れず、古庄は佳音の気持ちを察することはできなかったが、淡々と何事もなく授業は終わった。
何か騒ぎが起きるんじゃないかと、爆弾を抱えたように、古庄のひやひやは一日中絶えることはなかった。
しかし、佳音は職員室に顔を見せることもなく、その日一日が平穏のままに過ぎて行こうとしていた。
終礼の時、昨日までしていた個別指導のことが気にかかる。
昨日までと同じように、今日も指導ができるだろうか…?
すると、そんな古庄の心配をよそに、佳音は荷物を抱え教室を出て行ってしまった。
「…おいっ!森園!!」
思わず古庄は、佳音を追いかけて廊下で声をかけた。
せっかく軌道に乗り始めた個別指導を、このままなおざりにしてしまってはいけない。そう思った。
「帰るのか?個別指導はどうするんだ?」
佳音は立ち止まったが、そのまま振り向きもせず立ち去ろうとする。
「たった何日かで終わりか?……俺とじゃなくても、他の先生に頼んでやるから、少し勉強を見てもらえ」