恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
真琴に押されながら振り返り、古庄が佳音に声をかける。
そして脱衣所に入り、佳音の目が届かなくなった所で、古庄はいきなり真琴を抱き寄せ、その唇に口づけた。
佳音の電話する声を部屋の向こうに聞きながら、真琴は古庄の胸に手を置いて、古庄の行為に素直に応じた。
短いけれど、想いのこもったキスの後、古庄が真琴の頬を撫でながら囁く。
「……森園のこと。何も言わず受け入れてくれて、……ありがとう」
真琴は古庄の目を見つめて、ニッコリと笑いかけただけで、何も答えなかった。
頬にある古庄の手を優しく外すと、台所へと向かい、再び夕食の準備に取り掛かった。
「森園さん、来たばかりで申し訳ないんだけど、手伝ってくれる?」
真琴が居間の方へと声をかけると、コートを脱いだ佳音が、制服を腕まくりしながらやってきた。
それから女子二人は並んで台所に立ち、ほどなくして今晩の献立がテーブルに並んだ。
赤魚の煮つけに野菜の天ぷら、酢の物にお味噌汁…。
佳音にとっては久しぶりに見る、本当に食事らしい食事だった。
手作りでなければ味わえない優しい味覚に、佳音の心がホッとほどけていく。