恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
何事も諦めて、自分の前途にも希望を見いだせない佳音…。
こうしてしまったのは、愛情をかけなかった彼女の両親かもしれない。恋い慕う想いを受け容れなかった古庄自身にも、原因があるかもしれない。クラスメートも、彼女の心に踏み込もうとはしなかった。
けれども、一番肝心なのは、そこではない。
古庄はそれを告げるために、真琴への抱擁を解き佳音へ向き直って、思い切って口を開いた。
「森園……。寂しさや辛さって、誰かに癒してもらうものじゃない。周りの人間がどんなに慰めてくれたり寄り添ってくれても、自分本位な感覚でいる限り、自分の心はずっと寂しいままだぞ」
「自分本位って……」
佳音は戸惑ったように、古庄の言葉を反復した。
「それに、幸せだって、誰かに与えてもらうものじゃない。自分の心を鍛えて強くして、自分から努力してなれるものだ」
そう言い切った古庄の力強い言葉に、佳音は思わず顔を上げて古庄を見つめ返す。
その涙で濡れた顔を見て、真琴は近くにあったチェストの中からハンカチを取り出した。
「……でも、強い心を育てるためには、愛情が必要です」
佳音の頬をそっと拭ってあげながら真琴は、両親からの愛情を享けられない佳音の苦境を思いやって、古庄へと応える。