恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



古庄は佳音から真琴へと視線を移して、その眼差しを優しく和ませた。



「その愛情だって、自分からそれを吐き出せない人間は、享けることだってできないよ。人間は一人じゃ生きていけないから、幸せも一人きりではなれない。自分と関わる人間を幸せにしたいと思う心がなければ、自分だって幸せにはなれない」



古庄の信念とも言える言葉に、真琴はもう何も言えなかった。


真琴自身も、本当にその通りだと思う。
古庄といて幸せに包まれる時、自分も同じものを古庄に返したいと思う…。古庄がこう言うのは、真琴と同じ感覚を共有してくれているからに他ならなかった。



「…っていう俺も、真琴に出逢うまではそんなことを思いもしなかった。でも、この人を心の底から愛して、この人からも外見だけじゃない俺の全てを愛してもらって……」


古庄は佳音に語りかけながら、真琴と穏やかな視線を交わす。


「この人と子どもを成して、この人とその子どもの幸せのために、取り巻く全てを良くしていきたいと思うようになったよ。上手く言えないけど、強くなるって…そんな風に生きていくことじゃないかな?」


古庄の誠意の込められた真心からの言葉が、胸に沁みわたって、佳音は頷くように目を閉じた。また一筋、佳音の頬を涙が伝う。



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