恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



「……どうして、こんな私に賀川先生は優しくしてくれるの?…古庄先生とのこと、知ってるでしょう…?」


そんな佳音の問いかけに、真琴は視線を佳音から外して、少し困惑しながら古庄と顔を見合わせた。

佳音の対する真琴の感情の全てが、決して慈愛に満ち溢れているだけではないことを、古庄は知っている…。



「…それは、お前が大切な生徒だからだ…。俺にとってだけじゃない、真琴にとっても大切な生徒なんだよ」



古庄がそう言って、真琴の思考を代弁する。

真琴はいつだって、どんなに辛く複雑な思いを抱えている時でも、佳音のもとに向かう古庄に「行かないで」とは言わなかった。それは、何よりも佳音のことを大切だと思っていたからに他ならない。



「…それに、森園さんこそ、私の想いを鍛えてくれて確かなものにしてくれた。そして、この人に大事なことを伝えられる勇気をくれた……。だから、感謝してるのよ?」



古庄と視線を交わした後、真琴は再び佳音へと穏やかで柔らかい眼差しを向ける。


そんな風に優しく見つめられて、佳音の目には今まで経験したことのない涙が溢れてくる。


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