恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
プロジェクト
それは修学旅行が終わって間もない頃、真琴のクラスの加藤有紀が、古庄のクラスの溝口と他愛のないおしゃべりをしている中で、ポツリと言ったことから始まった。
文化祭を機にカップルになったこの二人。
有紀の健気で可愛らしい願望を聞いて、彼女を想う溝口は、何としてもそれを叶えてあげたくなった。
それから二人の画策が始まる。
事が事だけに、二人だけで成し遂げることは不可能だったので、クラス中をはじめ、生徒会の役員や教員までも巻き込んで奮闘中だった。
自分の苦しみから幾分解き放たれて、周りが見えてきた佳音は、クラスに漂う「何かが起こっている」空気を、ようやく感じ取れるようになる。
けれども、クラスから浮いた状態からは、そう簡単に抜け出せるものでもなく、クラスメートたちも、佳音の様子を遠巻きに窺っているだけだ。
…というより、その“プロジェクト”のことでもちきりで、佳音のことにまで気が回っていない。
それでも、自分から壁を作ることをやめた佳音は、決して自分が邪険にされているわけではないことを覚る。
それに気が付いただけでも、心にほんのり明るい光が灯った。
「佳音ちゃん。…助けてほしいことがあるの!」