恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
でも、一旦生地に鋏を入れてしまう前に、アドバイスしてくれたのは極めて適切だった。
「とにかく、賀川先生の体型に合わせてパターンを引き直さないとね」
古庄と真琴の結婚式なんて、当然面白くないのだろう。平沢は肩をすくめて突き放すような言い方をする。
「ええっ!?引き直すって、どうやってやればいいの?!先生、やってくれる?」
余計な仕事が回って来そうな雲行きに、しっかりとメイクを施した平沢のキレイな顔は怪訝そうに歪んだが、その場にいる女子生徒たちの気迫に押し切られて、しぶしぶ了承した。
「……わかったわ。じゃ、早く賀川先生の採寸をしてきて」
「了解ですっ!!」
有紀はそう言うや否や、メジャーを一つ掴むと、もう一人の女子と一緒にあっという間に被服室を出て行った。
残された佳音は、そこに広げられている真っ白な布地を見下ろし、真琴へと思いを馳せた。
真琴の優しく高潔で、澄み切った心を映したような純白――。
その布地で作ったドレスに身を包んだ真琴は、いっそう輝いて、きっととても綺麗だろうと佳音は想像する。
「このドレスの完成図っていうか、写真とかあるの…?」
佳音がクラスメートの女の子に尋ねると、女の子は頷いて、キットが入れられた袋の中から数枚の紙を取り出した。