恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
佳音はもともと手芸が得意だったこともあり、ドレス作りに没頭し、有紀よりも率先してそれに取り組んだ。
授業の間も早くドレスを作りたくて心が逸り、昼休みと放課後は一目散に被服室に行くのが、佳音の日課になった。
真琴のドレスが少しずつ形になっていく中で、佳音も周りの女の子たちと徐々に打ち解けて、教室の中でも楽しく過ごせるようになってくる。
もう、すがるような目つきで、古庄を見つめてくることもない…。
そんな佳音の様子に気が付いた古庄も、ホッと肩の力を抜きながら、安心して見守ることができた。
…と同時に、クラスの生徒たちが醸し出す、ただならぬ雰囲気も、古庄は敏感に感じ取っていた。
それが何なのか、生徒たちから訊き出そうにも、いつもは鬱陶しいくらいにまとわりついてくる女子生徒たちも、こんな時に限って姿を現さない。
授業の後などに雑談がてら、数人の生徒にカマをかけてみても、それを明かしてくれる気配もなかった。
「森園。お前この頃、個別指導はやってもらってるのか?」
終礼の前、古庄は佳音に声をかけてみた。
終礼が終わると、佳音に限らず生徒たちは、古庄に話しかけられるのを避けているのか、蜘蛛の子を散らすようにいなくなってしまうからだ。