恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
いや、戸部だけではない。学年部の教員たちは、何気なくこの二人の会話を盗み聞きして、ほくそ笑んだ。
この二人が、“あの計画”について、何も勘付いていないことに…。
「ま、気にしていても仕方がありません。その内分かりますよ。多分、古庄先生に内緒にしてて、後で驚かそうとしているんです。可愛いですよね」
何事も適切な真琴からそう言ってもらえると、古庄も納得して安心する。
古庄がホッと息を吐いて自分の席に落ち着くと、真琴のしていることが気に留まった。
机上のブックスタンドの問題集や参考書の類を、取り出して整理し直しているようだ。
「何してるんだい…?」
声をかけられて、真琴は手元にある問題集から、再び古庄へと視線を移した。
「今月いっぱいでここを引き払わなきゃいけませんから、少しずつ持ち物の整理をしてるんです。この体ですから、一気に動けませんからね」
真琴の言葉を聞いて、古庄もなるほど…という風に頷いた。
産休と育休で1年以上もいないとなると、私物を残しておくわけにはいかない。
真琴はこの学校に籍を置いてはいるが、その姿はこの学校から跡形もなくなるのだ。