恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「…来月から、本当にいなくなってしまうんだな…」
そんな古庄の寂しげな声を聞いて、真琴も寂しそうに薄く笑った。
2年前にこの学校に真琴が赴任してきた時から、二人は陰になり日なたになり協力してきていた。
けれども、育休が明けて真琴が現場に戻ってきたとしても、古庄は異動して転勤しており、二人はもうこれっきり席を隣にすることもなければ、同じ職場に勤めることもなくなる。
その現実を思うと、どうしようもない寂しさが古庄を襲ってくる。
傍らに真琴がいない自分なんて、教師としても何か欠け落ちてしまった存在のように感じられた。
真琴が不要になった参考書や資料類を紐で束ねて、それを抱えようとする。
すると、すかさず古庄が立ち上がって、代りに重い紙類の束を抱えた。
「君は重いものは持たない方がいい。どこへ持って行く?」
「これは、資源ごみ置き場に…」
と、真琴も古庄の好意に素直に応じて、一緒に職員室を出た。
階段を降り、廊下を歩き、ごみ置き場へと渡り廊下を伝う。
周りに誰もいなくなったところで、真琴が口を開いた。
「4月から私はこの学校からいなくなって、もうあなたと働くことはなくなりますけど、その代り、あなたとは一生一緒に生きていけます」