恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
婚約指輪 Ⅱ
「…そうだ」
あることに気が付いた古庄が、真琴を抱きしめる腕を解いて、自分の荷物を引き寄せる。
リュックサックの中から出てきたのは、きれいにラッピングされた小さな箱。
「これを君に…」
と、短い言葉と共にそれを差し出す。
古庄の不可解な行為に、真琴は首をかしげた。
「…どうして?誕生日でもないし、クリスマスにはまだ早いですよね…?」
「開けてみたら、解るよ」
そう促されて、真琴はリボンを解き、箱を開けてみる。
箱の中から出てきたのは、また箱。
真琴が赤いベルベットで覆われた箱を取り出し、手に取って開けてみるのを、古庄はドキドキと鼓動を速めながら見守った。
真琴が箱を開け、そこにある物を見つめる。
「……まだ結婚指輪は着けられないけど、婚約指輪なら…着けられるだろ?」
古庄はそう言いながら、箱の中ほどに差し込まれている指輪を指でつまみあげ、真琴の左手を取った。そしてその薬指に、そっと指輪をはめてみる。
「うん、サイズもピッタリだ」
満足そうに微笑む古庄を、真琴の震える瞳が捉える。
それから、自分の指にはめられた指輪に視線を落として、つぶやいた。