恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄が思わずそっとその頬を撫でると、真琴も焦りをなだめてホッと息を吐き、古庄の優しい表情を見上げた。
「……離任式が終わって、その日にある送別会…。その時に、お披露目しようか」
もちろん、これまで秘密にせざるを得なかった“結婚”のことだ。
真琴は、何も言わずに頷いた。
いよいよ“その時”が近づいてきて、真琴の表情に緊張が加わると、古庄はそれを軽く笑い飛ばす。
「きっと、皆。ものすごく驚くぞ」
それから、古庄が真琴の背を押し、二人で寄り添ってごみ保管庫を出ている時、目の前をラグビー部の堀江が通りかかった。
たった今の二人の甘い場面を見られていたのではないかと、真琴の心臓が跳び上がる。
それに引き替え古庄は冷静なもので、こんなゴミ置場に二人でいる不自然さをごまかすでもなく、堀江に声をかけた。
「…堀江、お前!さっき終礼で、早く部活に行きたいって言ってたのに、何やってるんだ!」
確かに、部活生は皆、それぞれの部で活動をしている時間帯だ。それなのに堀江は制服姿のままで、その肩には巻いて筒状になった赤い絨毯のようなものを担いでいる…。