恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
手持ち無沙汰なので、午後からは休みを取って美容院にでも行こうと思い立つ。
臨月が近づき、お腹がもっと大きくなると自由に動くのもままならなくなるし、赤ちゃんが産まれたら、それこそ美容院どころではないだろう。
「いいね!仕事も、もうすることはないだろうから、行ってくるといいよ。美容院」
と、古庄が真琴に語りかけるのを、石井が聞きつけて血相を変える。
「…だ、ダメよ!髪なんか切っちゃ…!!」
藪から棒な石井の言い方に、真琴が疑問を露わにし、目を丸くして振り返る。
「だって、今日は寒いじゃない?風邪を引いたら大変よ?」
取って付けたような石井の言い訳を聞いて、今度は過保護な古庄が血相を変える。
「…そ、そうだ!寒い間はやめてた方がいい。もっと暖かくなって、行けばいいよ」
古庄からもそう言われて、真琴も石井の取り越し苦労を笑い飛ばせなくなる。
「そうですね。やめておきます」
しぶしぶ真琴が頷くのを見て、石井はホッと胸を撫で下ろした。
ここまで来て真琴が髪を切ってしまったら、生徒たちの計画が台無しになる。つい先日も、花嫁さん用のヘアカタログを見ながら、真琴に似合いそうなものを研究して、スタイルを決めたばかりだ。