恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「……何で、古庄くんが反応するの?」
ほんの少し意地悪な思惑を隠して、石井が笑いかけると、古庄は極まり悪そうに目を逸らした。
この一連のやり取りを、周りの同僚たちも見て見ぬふりをしながら、笑いをかみ殺して窺っている。
すると、そこで真琴が口を開いた。
「役に立つとか立たないとか、そんなことは関係なくて。一緒にいてくれるだけで心強いから…」
真琴から醸される幸せのオーラにあてられて、石井だけでなく、周りも息を呑んでシーンと静かになった。
しかし、のろけようとしているわけではないのは、真琴の素直な表情を見れば判る。
古庄も、真琴のこの言葉を背中で聞きながら、胸がキューンと苦しくなって鼻息が荒くなった。
今すぐに立ち上がって、真琴を抱きしめ、
「この人は俺の嫁さんだ!!」
……と、宣言してしまいたい衝動を、拳を握ってグッと我慢した。
「…それじゃ、私。やっぱり今日は帰って、引っ越しの準備でもします」
真琴は、そう言って席を立った。妊婦とはいえ、何もせずにボーっとはできない性分みたいだ。
真琴がいなくなって1分もしないうちに、古庄は居ても立ってもいられず、誘われるように真琴の後に続いて職員室を後にした。