恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「そうだ、君には婚約者がいる。アイツにもそう思わせとかないと…!」
「…アイツ…?」
古庄が憮然として言った言葉に、真琴は首を傾げた。
「…高原の野郎だ」
「……!!」
古庄がそれを知っていることに驚いて、真琴は目を見張って古庄を見つめた。
「君が告白されているのを、偶然聞いてしまったんだ…」
「そうだったんですか…」
真相を知って、真琴の言葉が途切れた。
先週の古庄の様子が少し変だったことに、これで納得がいく。
その途端、そのことを古庄に言わなかったことが申し訳なくなり、真琴の中の罪悪感が大きくなってきた。
「…秘密にしようと、思っていたわけじゃないんです。高原先生には、あの次の日にちゃんと断ったし…」
「なんだ。そうか…」
ホッとしたような表情を見せて、古庄は肩の力を抜いた。
けれども、それでもなお、時折真琴に向けられる高原の切ない目を思い出して、胸の底の方にモヤモヤとしたものが溜まっていくのは、どうしようもなかった。
「だけど、アイツはまだ諦めきれないみたいだから、この指輪はとにかく君の薬指に…」
と言いながら、古庄は真琴の手を取って、外しかけていた指輪をきちんとはめ直す。