恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「……そんな風に言うと、ちょっと可哀想ですね」
「じゃあ、他にどう言えばいい?変に気を持たせると後が厄介だ。……それとも君は、そうやって言い寄ってくる人に俺が優しくして、親密になってもいいのかい?」
「親密に……」
そう言われて、真琴は言葉を逸した。
古庄が言うように、そうなってしまったところを想像するだけで、真琴の体が震えてくる。その震えを抑えるために唇を噛むと、古庄を見つめる目には涙が浮かんだ。
「すまない…!君をそんな気持ちにさせるつもりじゃ…」
古庄は焦ってそう言いながら、再び真琴を抱きしめた。
「だけど、解ってほしい。高原のことを知った時、俺も同じ気持ちだったことを…」
「…私は、親密なんかになっていません…」
古庄の胸に顔を押し付けながら、真琴が絞り出す。
「解ってるよ。だけど、この指輪はずっと君の薬指に着けていてほしい。これは君を守ってくれるし、何よりも俺が君だけを愛している証拠だから」
そんな古庄の言葉は真琴の胸に響いて、悲しくはないのに、その瞳にはもっと涙が溢れてくる。
微かに頷いて、古庄の腕の中で左手の甲を見下ろす。
そのまん中で光っている石の輝きは、古庄がくれる想いのように純粋で澄み切っていた。