恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「ホントだ。生徒の言うとおり、婚約指輪!賀川さん、ホントに婚約したの?!」
最初にやってきたのは、同じ学年部の石井だった。
昼休み、お弁当を食べている真琴を覗き込み、おめでたい話に石井の顔も歓喜で輝いている。
「…うん、そうなの」
少し決まり悪そうに答える真琴の様子を、古庄は隣の席から窺って、ニヤリと笑みを噛み殺す。
「うわー!ホントなのね?おめでとう!また近いうちに女子会開いて、詳しいことを聞かなきゃね!」
しかし、石井は忙しかったのだろう。そう言いながら、すぐに真琴の側を去って行き、真琴がホッと胸をなで下ろしたのも束の間…。
次にどっと押し寄せてきたのは、谷口、中山、一宮理子の女子会仲間たち。
「石井さんから聞いたんだけど、婚約したって?」
開口一番、中山がズバリ核心を訊いてくる。
「うん……」
詳しくは語れないし、元来これも嘘なので、真琴はおのずと言葉少なになってしまう。
「おめでとうございます!突然だったから、ビックリです!お相手は、やっぱり先生ですか?」
理子もお祝いを言って、可愛らしい笑顔を向けてくれたが、その笑顔を見て真琴の心に影が差した。