恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「弟の分まで、学校のみんなや俺や、他の先生たちも君の側にいるからな。今は悲しくて辛いだろうが、少しずつでいいから生きている自分のことに目を向けるんだぞ」
職員室の古庄のもとに来ていた佳音に、古庄がそう言って元気づけているのを、真琴は隣の席で聞いた。
「何でも力になるからな」
優しく語りかけられて、佳音は寂しい表情のまま黙って頷く。
真琴だって、たった一人の弟、正志がいなくなってしまうことを想像するだけで、目には涙が浮かんでしまう。
今の佳音の悲しみは、どれだけ深いものだろう…。
「…君にも、森園のことを気にかけて、見守ってあげてほしい」
佳音が教室に戻った後、古庄からそう頼まれて、真琴は目を合わせた。
そう言われても、佳音は地理選択者だったし、真琴とは直接的な関わりがない。
「男の俺には気付けないことでも、女の君なら気付けることもあるはずだから。今は森園の些細な変化も見逃しちゃいけないと思うんだ」