恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「ちょっと、どきなさい」
と、すでに出来上がっている生徒たちの人垣を押し退けて、真琴のもとにたどり着く。
そして、そこに倒れている真琴の姿に目を剥いて、ひざまずいた。
「まこっ……賀川先生!賀川先生!」
肩を掴んで、大声で名前を呼んで、意識の確認をする。
すると、真琴はうっすらとまぶたを開いた。
「…大丈夫です。ちょっと立ちくらみがしただけです」
そう言いながら、真琴はおぼつかない意識のまま、床に手をついて無理に起き上ろうとする。
けれども、こんな風に倒れてしまうなんて、よほど重症の“立ちくらみ”だ。
古庄は真琴の行動を制するように、肩を抱き膝の裏に腕を差し入れて、軽々と真琴を抱き上げた。
真琴が目を丸くして驚いたのと同時に、周りにいた生徒たちも、その光景を見て息を呑んだ。
「…だ、大丈夫です。お、降ろしてください」
「何言ってるんだ。今降ろしたら、また倒れるだろう?」
唖然としている生徒たちをかき分けて、古庄は踵を返して歩き出す。行先はどうやら、保健室みたいだ。