恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
普段から古庄は、そこにいるだけで誰もが思わず振り返ってしまうような存在だ。その古庄が、真琴を抱えて急ぎ足で歩いている。
授業が終わって廊下に出てきている生徒達の視線を一身に受けて、真琴は焦り始めた。
声を潜めて、古庄の胸元から囁く。
「ダメです…!こんなことをしたら、本当にみんなに知られてしまいます」
そう言うと、古庄の腕から逃れようと、必死で暴れはじめた。
この真琴の抵抗には古庄も抗いようもなく、たじろぐように真琴を下に降ろすしかない。
すると古庄の言うとおり、足が廊下に着けられた途端、真琴は強烈なめまいに襲われる。一人では立っていることもままならず、再び古庄の腕に抱え上げられた。
「ほら見ろ、俺の言った通りだろう?」
真琴は観念して、大人しくなる。
けれども、周囲の生徒達や職員たちの視線には耐えられず、目を閉じ、気を失っているふりをした。
保健室のカーテンに仕切られたベッドに横たえられると、真琴はやっと目を開けて息を吐いた。
「…貧血かしら…?」
養護教諭がそう言いながら、下まぶたの裏を確認して診てくれている。それから脈をとり、血圧も計られた。