恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜




普段から古庄は、そこにいるだけで誰もが思わず振り返ってしまうような存在だ。その古庄が、真琴を抱えて急ぎ足で歩いている。

授業が終わって廊下に出てきている生徒達の視線を一身に受けて、真琴は焦り始めた。

声を潜めて、古庄の胸元から囁く。


「ダメです…!こんなことをしたら、本当にみんなに知られてしまいます」


そう言うと、古庄の腕から逃れようと、必死で暴れはじめた。


この真琴の抵抗には古庄も抗いようもなく、たじろぐように真琴を下に降ろすしかない。


すると古庄の言うとおり、足が廊下に着けられた途端、真琴は強烈なめまいに襲われる。一人では立っていることもままならず、再び古庄の腕に抱え上げられた。


「ほら見ろ、俺の言った通りだろう?」


真琴は観念して、大人しくなる。

けれども、周囲の生徒達や職員たちの視線には耐えられず、目を閉じ、気を失っているふりをした。



保健室のカーテンに仕切られたベッドに横たえられると、真琴はやっと目を開けて息を吐いた。



「…貧血かしら…?」


養護教諭がそう言いながら、下まぶたの裏を確認して診てくれている。それから脈をとり、血圧も計られた。




< 51 / 343 >

この作品をシェア

pagetop