恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
しかし、その途端、また着信音が鳴り始めた。
真琴はもう集中できなくなり、二人の甘い時間どころではなくなった。
「…和彦さん。これはきっと緊急事態です。何か起こったに違いありません」
覆いかぶさっている古庄を押しのけるように、真琴が身を起こす。
古庄も真琴を無理に拘束しようとはせずに、忌々しそうに時計に目をやった。
時刻は夜の11時になろうかという頃。こんな時間にかかってくる電話なんて、きっと生徒がらみの事件の可能性が高い。
「…やっぱり。学年主任からです」
スマホの発信者を確認してそう言いながら、神妙な顔つきで真琴は応答ボタンを押した。
「はい。……い、いえ。知りません…。どうしたんですか?………えっ!?本当ですか?」
学年主任と会話をしながら、真琴が古庄の顔を凝視する。
「いつ頃から?……それじゃ、私もこれから…。はい。ええ、分かりました」
電話を切った真琴の顔がこわばっているのを、古庄は見逃さなかった。
真琴のクラスの生徒に何かあったのかと、嫌な予感が意識の中を占拠する。