恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「ほら、そこどけ。手を離せよ」
真琴と同じように、息を呑んで硬直している男の胸を押し、佳音を掴んでいる手を払って、古庄は佳音を確保する。
そして、佳音の背中を押しながら、真琴の腕を取って立ち上がらせた。
その時、古庄の背後に、拳を握って襲いかかって来ようとしている男の姿が、真琴の目に映る。
「…古庄先生!後ろ……!!」
真琴のとっさの一言に、古庄は振り返り、拳をかわした。
真琴も佳音の肩を抱き背を向けて、佳音の身を護る体勢を取る。
拳が空を切った男は、体を翻して、もう一度古庄に突進して来たので、古庄はそれをもう受け止めるしかなかった。
「………!!」
真琴が声にならない叫びをあげ、二つの体がぶつかり合う瞬間に、古庄は相手の脚を取りにいった。
大男は一瞬で仰向けに倒される。
それから、脳震盪を起こしたのか、気を失って動かなくなった。
「…あ、やべ…。マジでタックルかましちまった…」
ノビてしまった男を見下ろして、古庄は肩をすくめた。
大男がいとも簡単に倒されてしまったのを見て、連れの男は非情にも大男を置き去りにして車に乗り、逃げようとする。