恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜




古庄はそれを受け止めるように、ただ黙って佳音を包み込むように、その肩をしばらく抱いていた。


少し離れた場所にいた真琴は、自分の胸が少し苦しくなったのを感じた。


でも、心がすさんでいる今の佳音には、ああしてあげなければならない…。
古庄は教師として最善のことをしている…。


そう自分に言い聞かせて、唇を噛み、その光景をそっと見守り続けた。



佳音は嗚咽が落ち着くと、促されるまま素直に真琴の車へと乗った。

来た時と同じように古庄が運転し、真琴は佳音と一緒に後部座席へと座る。


今は何を言っても気休めにしかならず、佳音の救いにはならないような気がして、真琴は何も語らなかった。


ただ、座席の上に置かれた佳音の手を握った。


ピクリと佳音の体が反応したが、うつむいた顔を上げることなく、握られた手に視線を落としただけだった。

けれども、真琴の手を拒否することはなく、自宅に着くまでの10数分間、黙ったまま深夜の夜の街を見つめていた。



佳音の家に着くと、彼女は古庄に伴われ、明かりが灯る玄関の中へと入って行った。
数分で、古庄はドアを開けて再び姿を見せ、車へと乗り込んできた。真琴も助手席の方へと場所を移動する。





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