恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
俺のものだ!
――いっそのこと、真琴がすでに“売約済み”だという印を付けられたらなぁ……
そんな風に思ったのは、木曜日の昼下がり、授業の空いてる5時間目だった。
そこで、今更ながらに古庄は気が付いた。“指輪”というものの存在を。
結婚指輪は着けられないにしても、婚約指輪だったらどうだろう?
何も語らずともそれを着けているだけで、十分に結婚する相手の存在を示すことはできる。
――でも、指輪って、どうやって買うものなんだ?
かつて、真琴の親友の静香と結婚寸前まで行った時には、確かに“結婚指輪”が用意されていた。けれどもそれは、代金を支払っただけで、古庄自身が選んで買ったものではなく、式や全てにおいて周到だった静香が用意したものだった。
静香のことを思い出すと、彼女に対する後ろめたさと真琴の悲しみを彷彿として、心の奥がチクリと痛む。
しかし、一度は結婚を決めていた静香に対しても、古庄はそんな感じだ。
プレゼントで女性の気を引かずとも、常に女性の方から寄って来られたこともあって、当然今までの人生で、女性に指輪はおろか宝飾品の類を贈った経験はなかった。