恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜



高校生は、親の手がかかるほんの小さな子どもとは違い、もう一人前の口も利き、心もずいぶん成長している。

とはいえ、やはりまだまだ“子ども”だ。
“大人の事情”など到底理解できず、それに振り回され、心に傷を負う。

そして、その傷を癒してくれる場所や相手を求めて、さまよい始める。



でも、佳音はあれから夜の街をさまよわなくなった。

心を癒す拠り所として、何があっても自分を受け止めてくれる古庄という存在を見つけたから。

それを表すように、あの一件以来、佳音は頻繁に古庄の側に姿を現すようになった。



そんな佳音の古庄を見る眼差しが変化したことを、真琴は敏感に察知する。



佳音は、古庄に恋をしている――。



それはまさしく、前に古庄が言っていたように、男の古庄には気付けなくても、女の真琴だから気付けることだった。

古庄に対して同じ想いを抱いている真琴だから、なおさら佳音の気持ちは響き合うようによく解った。



ただ単に、自分を守ってくれる人の側にいたいだけではなくて、古庄を恋い慕う気持ちと自分を否定されない安心感――。


あの古庄に抱きしめられて、「俺がお前を守ってやる」と断言されたら、佳音でなくとも誰だって、古庄に恋をしてしまうだろう。




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