恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
遠くから聞こえる野球部員の掛け声を耳にしながら、真琴が目を閉じた時、ドアを開ける気配がした。
「…眠っているのか…?」
心に染み入るこの声――。
それを聞いただけで、真琴は体が震えて泣きたくなってくる。
目を開くとベッドの横に、真琴が誰よりも会いたいと思っている人が立っていた。
真琴が気が付いたので、古庄は枕もとに丸椅子を寄せて座り、その顔を覗き込んだ。
「…また、君が倒れたって聞いて。大丈夫……じゃないな。顔色が悪い」
そっと頬を撫でてくれる古庄を、真琴は枕に頭を預けたまま見上げた。
「あれからも本調子じゃなかっただろ?ずっとしんどそうだった」
古庄が気付いてくれていたことは嬉しかったが、真琴は心配をかけていたことが情けなくて、言葉を返せずただ唇を噛んだ。
「一度きちんと医者に診てもらった方がいい。何か悪い病気だったらいけないし…。貧血がひどいのか?何科に行けばいいのかな?…何だったら、今からでも一緒に病院に行こう」
そう言ってくれる古庄の言葉が沁みて、真琴の胸がいっぱいになる。
けれども、それを遮るように、真琴は体を起こした。