恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
新しい命
「君はいつから気づいてたんだ?」
真琴が診察を受けて帰宅するのを待ち兼ねていた古庄が、部屋のソファに真琴と隣り合って座りながら尋ねた。
手には、真琴が産婦人科からもらってきた胎児のエコー写真がある。
「妊娠してることですか?」
真琴が訊きなおしたので、古庄は写真を見つめながら頷いた。
写真の中の我が子は、まだ小さな塊でしかない。
でも、真琴の説明では、映像を見ると細い手足や微かな心拍が確認されるそうだ。
「検査薬で確かめたのは、和彦さんに打ち明けた前の日です。そうじゃないかと思い始めたのは、その2,3日前ですけど」
「どうしてそう思ったんだ?やっぱり普通に体調が悪いのと違うのか?母親になると、本能的に気が付くものなのかな?」
不思議な現象を目の前にした少年のように、古庄の目は素朴な疑問に満ち溢れていた。
しかし、真琴は肩をすくめて苦く笑った。
「本能的に気づけるのなら、私は母親失格です。もう9週に入ってて、もっと早く受診するべきだと言われました」