恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「吐き気もあるのか…?」
古庄は我が身に降りかかる災難のように、眉を八の字にした。
「吐き気だけじゃなく、このだるさや頭痛、めまいなんかも、つわりの症状の一つだって教えてもらいました。経験してみなきゃ分からないものですね」
そんな風に言って微笑む真琴を、古庄はそっと抱き寄せた。
「子どもが生まれてくるのはすごく嬉しいけど、君一人にそんな辛い思いをさせて……」
洗いざらしのシャツの匂いとその下の胸の鼓動を感じながら、古庄の思いやりが真琴の心に沁みてくる。
「あなたの一部が私の中で息づいているんですから、全然辛くありません…」
その現実を噛み締める度、喜びで震える。それは、真琴だけでなく、古庄も同じだった。
この喜びを感じるのも、お互いをこの上なく愛しいと思っていればこそだ。
「君は俺の命よりも大切な人だ…。何があっても、俺が守るから…」
そう囁く古庄の唇が、真琴の額に触れた。
――…俺が守るから……。
この前、佳音に語られたのと同じ言葉…。
けれども、その言葉の中には違う響きがある。
古庄の唇が自分の唇へと、優しく重ねられるのを感じながら、真琴はその響きの意味を考えた。