恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜




「うん、今は母親と一緒に暮らしてるらしいけど。森園が高校に通ってる間は、名前は変えないらしい。…というより、母親も今は自分のことでいっぱいいっぱいみたいだな…」


佳音の家の中のことを思い描いただけで、真琴の心は暗く陰ってくる。


他のことは何も考えられなくなるほど、「離婚」というものはエネルギーを費やすものなのだろう。

…いや、きっと佳音の母親だって、佳音のことをきちんと考えているに違いない。
ただそれが、佳音に伝わっていないだけで…。


自分の中で育んで産み出した命を、愛しいと思わないはずがない――。


真琴は自分の中で息づいているかけがえのない存在を確かめながら、その真理を疑わなかった。



「年が明けての修学旅行…。森園さんも一緒に行けるといいですね…」


来年の2月の上旬にある修学旅行についての準備を、そろそろ始める頃だ。


しかし、集団生活になじまない生徒や不登校の生徒は、修学旅行への参加を渋ることが多い。これまでの経験から、そんな傾向が真琴の頭に過った。




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