恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
「そうだ、修学旅行…。森園のことはともかく、君も行くのか?」
いきなり、そう尋ねてきた古庄に、真琴は目を見開いて視線を合わせた。
「…クラス担任なんですから、行くに決まってます。なんでそんなこと訊くんですか?」
そう問い返されて、古庄の方も目を丸くする。
「いや…、だって。君はそんな体で…無理なんじゃないか?」
そのことを指摘されて、真琴は顔色を変えて古庄を凝視し、黙り込んでしまった。
その変化した色が、不穏なものだということに古庄も気が付いて、黙って真琴の言動を待った。
しかし、真琴は何も発することなく自分の机に向き直って、何か書き物を始める。
真琴の行動の意味が分からず、古庄も極まりが悪いように自分の机へと向かわざるを得なかった。
しばらくして、真琴の手が伸びてきて、そっと古庄の机の上にメモ用紙を置いた。
〈 もちろん産科の医師と話し合わねばなりませんが、修学旅行の頃は安定期に入っているので、よほど状態が悪くない限り行けるんじゃないかと思います。
そのことよりも、来年の3月までにお腹も大きくなってしまうから、妊娠していることは隠しておけなくなります。「未婚」で妊娠したなんて公表できないし…〉