恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄が合鍵を使って入ってくる音が響いて、真琴はとっさに壁の方へと寝返りを打った。
居間の方の照明が点けられ、ベッドのある隣の部屋も漏れてきた明かりで照らされる。
「……真琴?帰って来てるのか?」
優しく語りかけてくれるこの声に、真琴の涙はもっと溢れてくる。真琴は泣き声が立たないように我慢するのが精いっぱいで、何も答えられなかった。
古庄は、ベッドに横たわっている真琴を見つけ、側にひざまずいて覗き込む。
「真琴?どうした?具合が悪いのか?」
真琴は泣き顔を見られまいと枕に顔を押し付け、微かに頷く仕草を見せた。
「そうか……可哀想に……」
と言いながら、古庄は優しく髪を撫でてくれる。
このまま古庄の方へと向き直れば、古庄は抱きしめてくれるだろう。求めれば、キスも愛撫もしてくれるかもしれない…。
しかし、真琴はそうしなかった。
佳音と会っていたばかりの古庄には、抱きしめられたくない。
枕に顔を押し付けたまま、唇を噛みしめた。
「…飯は食えそうか?」