恋はしょうがない。〜職員室の新婚生活〜
古庄が心配するのも、もっともだった。特にこの1週間ほどは、まともに食事を摂れていない。
食べていないのに真琴は食欲を感じず、まれに空腹を感じて食べてみても、今日のように吐き戻してしまう。
古庄の言う通り、本当に痩せてしまったことを、真琴も自覚していた。
でも、この症状は、紛れもなく真琴の中で新しい命が息づいている証拠だ。
ずっと今の状態が続くわけではなく、つわりの時期が終わったら…最低でも赤ちゃんが産まれ出でたら、以前のように食べられるし、疲労も今より軽くなる。
そう思って気を取り直し、真琴はため息をついた。ベッドへ戻ろうと、グラスを洗い、タオルで手を拭く。
その時、痩せて細くなった真琴の指から、スルリと指輪が抜け落ちてしまった。
「あっ……!」
タオルの中から、指輪が床へと、音を立てて落ちて転がる。野菜カゴの前で光っているそれを見つけ、真琴はホッとして拾い上げた。
再び自分の指にはめ直そうとした時、その内側にある刻印に気が付く。この指輪を古庄にはめてもらってから、古庄の要望の通り、一度も外したことがなかったので、今までその存在を知らなかった。