キスをお先に、頂きました





「遥葵…」




朱加が切なげにそう呼ぶ。



俺はぎゅうっと朱加を抱きしめた。




それから俺と朱加は、半開きだったドアの向こうに入り――…玄関へと倒れ込んだ。






「朱加…髪、切ったんだな」





ロングも可愛いが、ショートボブも似合うんだな。



気づいたことに嬉しいのか、朱加はとても嬉しそうな顔をする。







「……遥葵にフラレたと思ったから」




ああ、そうか…。





「…ごめん。でも、すごく可愛い。似合ってる」





その言葉にお世辞は一つもない。






俺に失恋したと思って髪切って……、そんなに可愛くなっちゃダメだろ?



他の男が寄り付きそうだ。



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