キスをお先に、頂きました
「……朱加に、渡したいものがある」
「なに……?」
朱加は不思議げな顔で俺を見つめた。
首をかしげる朱加も、すごく可愛い。
俺はバッグから、プレスレットの箱を探す。
大切に、ポケットに入れておいたんだ。
正座をする朱加。
「これ、良かったら、もらって。いや――貰ってください」
言い直してしまったが、言えた。
朱加はなんなのかと恐る恐る手を伸ばす。
その箱を受け取った時、ほんの少し朱加の手に触れた。
その温かさは朱加の体温そのものだった。