キスをお先に、頂きました





「もしもし、そこのお嬢さん」




私はそんな不意の言葉に立ち止まる。




私?



泣いているから、声をかけられたんだろうか。



すごくKYな人。誰。



喋りかけないで欲しい。






涙で歪んだ視界の中で見てみれば―――ピンクの服を着た、サンタクロースだった。






「……」




やばい、怪しすぎる…。




「まっ、て!」





私が慌ててまた歩き出すと、そのサンタに腕をぐいっと掴まれる。



…すごい握力だ。





あまり怖くはないけれど、不気味だ。



サンタは髭と帽子で顔を覆い隠しているので、表情がわからない。






格好はというと、なんか……もさもさしてる。



< 38 / 114 >

この作品をシェア

pagetop