キスをお先に、頂きました
「もしもし、そこのお嬢さん」
私はそんな不意の言葉に立ち止まる。
私?
泣いているから、声をかけられたんだろうか。
すごくKYな人。誰。
喋りかけないで欲しい。
涙で歪んだ視界の中で見てみれば―――ピンクの服を着た、サンタクロースだった。
「……」
やばい、怪しすぎる…。
「まっ、て!」
私が慌ててまた歩き出すと、そのサンタに腕をぐいっと掴まれる。
…すごい握力だ。
あまり怖くはないけれど、不気味だ。
サンタは髭と帽子で顔を覆い隠しているので、表情がわからない。
格好はというと、なんか……もさもさしてる。