キスをお先に、頂きました
駄目だ、また、泣いちゃいそう――
コンコン。
不意に、扉をたたく音がした。
「なに?」
私が言うと、扉が開いた。
――お母さんだ。
スーツとコートを着て、カバンを持ち、完全に出かける格好だ。
危なかった…。
「じゃあ、お母さん、仕事行ってくるから」
「うん。いってらっしゃい」
クリスマス、好きな人と過ごしたいと私は思うけど…
お母さん、一生懸命頑張ってお仕事してるんだよね。
私はお母さんを玄関まで見送った。
お父さんは朝から仕事に行き、お母さんは昼から出勤だ。
「あ、そうだ。お昼ご飯は作ってあるけど……晩御飯は自分で作ってね」
「うん。わかった」
私が作ればよかったかなぁ…と、少し後悔する。
お母さん、これから仕事なのに。