ふわふわ。
倉坂さんの隣に、運がいいのか悪いのか、困り顔のお嬢さん。
話した事はないけれど、確か営業の新人だったかな。
まぁ、入社から半年も経てば“新人”とも言えないけれど。
さまよい出した視線の先には、たぶん営業の先輩たち。
……無言でガッツポーズって?
「く、倉坂さん。唐揚げをとりましょうか!?」
……何だか始まった。
対する倉坂さんは、無言で彼女を見て、それから静かに首を振る。
「食べたい時には自分で取りますので、お構い無く」
…………。
うーん。
たぶん試練だろうな。
普段から、こういう場に現れない先輩の接待出来ればOKて、そんな感じかな?
営業は話してなんぼって所があるしね~。
でも、相手は鉄仮面だし。
「ビ……ビールおつぎしましょうか?」
いやいや、倉坂さん飲んでるのビールじゃないし。
「結構です。自分のペースで追加しますので」
……でしょうね。
「じゃ、じゃあ、追加を頼みますか?」
いや。
まだ一口くらいしか飲んでないし。
君、緊張しずぎじゃないかな?
倉坂さんも、何かに気づいたのか、彼女と離れた場所に座る営業のメンツを見比べ始めた。
「大変ですね」
「はい! あ、い、いいえ!」
顔を真っ赤にしたお嬢さんは、なかなか頑張り屋さんみたい。
「倉坂さん。何を飲んでいるんですか?」
そんな会話を落としてみたら、渦中の二人が私を見た。
「ウーロン茶です」
「ここのウーロン茶は飲める方ですよね。たまに出涸らしみたいなのとか、濃すぎる店があって、びっくりします」
「ああ! 解ります~。酔いざましに頼んだら、変な味のウーロン茶ってありますよね~」
キラキラモードのお嬢さんが加わって、倉坂さんは私をチラッと見る。
いい大人なんだから、付き合ってあげるのも所属は違えど上司の役目だと思うのね。
だって、貴方補佐と言えども主任だし。