ふわふわ。
「変な味……ですか?」
「たまに、金物くさいのとか~」
「色のついたお水みたいなのとか」
「ウーロン茶って言って出されて、お番茶だった、なんて事もありました~」
次々に上がるウーロン茶の色々に、倉坂さんはしみじみと手元のウーロン茶を眺める。
「色々とあるのですね。こちらは普通にウーロン茶してますが」
会話になったのが嬉しいらしく、彼女はニコニコと頷いた。
「私、よくこのお店屋来るんです~。倉坂さんは、何かお嫌いな食べ物ありますか?」
「セロリは苦手ですが……」
「じゃあ、私のオススメ食べてみて下さいよ~」
ひょいひょいと取分け皿に、唐揚げやら茄子の煮物やらサラダ類を乗せて、彩りよくプチプレートを作ると、それをニコニコと倉坂さんに手渡す。
……慣れるの早っ。
「ありがとうございます……」
「あ。山根さんにもお取りしますね」
「ありがとう」
あれ。
私、名前言ったかな。
うちの課って大所帯だから、けっこう覚えるの大変なのに。
不思議そうな顔に気づいたのか、倉坂さんよりはサラダ多目のお皿を渡してくれつつ、ニッコリ笑う。
「私、名前覚えるの得意なんです。あ。私は堺って言います。土に世界の界って一文字で堺。お見知りおきを!」
「……営業職は、ある意味で天職かもしれませんね」
倉坂さんの呟きに、ぶんぶん首を振る堺さん。
「まだまだですよ~。先輩には言葉使い直せってよく言われます~。目標は咲良さんみたいにハキハキした方なんですけど~」
思わず真顔になって、
『それは止めておいた方がいい』
倉坂さんと、何故かハモった。