ふわふわ。
昼のフロアにはたくさん人がいて気にならないけれど、夜になったフロアはとても独特。
ある意味では、残業常連な私だから気づいたのか……。
残業する人って、けっこうメンツが一緒だし。
たまに仕事が残っちゃって残業中の人はいるけれど、その他の人はだいたい限られてくる。
……咲良さんは、どちらかと言うと定時にはいなくなる人の部類。
「なんで私なんですか」
「だって、私も早く帰りたいし、山根ちゃんに頼むのが一番早くて正確だし」
「…………」
ほめたって、何も出ないんですからね。
書類を受けとると、咲良さんの顔が輝いた。
「ありがとう山根ちゃん。お誕生日だから帰りにお姉さんレーベルで奢ってあげる」
「高いの頼みますよ?」
「あはは、OKよ」
レーベルは昼間はカフェで、夜はバーになるお洒落なお店。
会社からさほど遠くない場所にあるから、咲良さんとたまに行く事もあった。
最近は仕事仕事しててあまり行ってなかったけれど、お酒は嫌いじゃないし、嬉しいかも。
どうせ、帰った所で一人だし。
ちらりと少し離れた、今は空いているデスクを見て、渡された書類を数えた。
うん。
これなら確かに時間はかからなさそう。
それに、今日は倉坂さんも出張らしくいないし。
あれから、何だか気まずいしね。
まぁ、倉坂さんは普通と言うか、鉄仮面に変わりはないんだけれど。
何て言うか“そうなんだ”て、知っちゃったら、どう接していいか解らないと言うか。
そもそも、接し方の難しい人が、ますます解らなくなっただけなのだけど。