ふわふわ。
昼間はまわりにたくさん人がいてあまり気にならないけれど、残業して、遅くまで残ると人が減って目立つと言うか。
倉坂さんは、だいたい残業してるから。
と、言うか。
主任補佐なんだし、仕事も振り分けちゃえば残業しないで済みそうなのに、あまり人に振ることもなさそう。
人付き合いが苦手と言うか、下手。
しかも本当に鉄仮面で、表情は変わらないし……。
何を考えているのか解らない人は……やっぱり苦手だ。
うん。
だからと言って、この間の夜みたいに、思っている事をストレートに言えば良いってわけでもないし。
難しい所だよね。
「んで、倉坂の情報を教えろって?」
仕事も終わり、咲良さんとレーベルの席につくと、この間の夜の終わり方を根掘り葉掘り聞かれて今に至る。
「ってか、そこまで言われて、進展してないあんた達にビックリだわね」
「だって、突然過ぎて逃げ帰りましたから……」
残業が気まずいのも、実はその点にあるのだけれど。
まず頭が真っ白になって、それから辺りに同僚たちの姿もなくなっている事に気づいて。
気づいた瞬間、走って逃げた。
走って逃げるって言うのもなんだけれど、パニック状態になると、人は思わぬ事をすると感じた。