ふわふわ。
謎
「山根さんて、下の名前はなんて言うんですかー?」
そんな質問が飛び出したのは、休憩室でのランチタイム。
うちの会社に社食はあるけれど、コンビニ弁当や自作弁当を広げるにはこの広い休憩室が重宝する。
私も、簡単ながら自作弁当を食べていたんだけれど……。
何故、堺さんが目の前にいるんだろう。
「何。突然」
「いえ。深い意味はないんですけどー。流石に名字は皆さん呼ぶんでわかるんですが、下の名前は知らないなぁ~なんて?」
キャピキャピと可愛らしい笑顔の堺さん。
ようは好奇心ですか。
「里桜っていいますよ」
「リオさん?」
「山根里桜、里に桜って文字。自然一杯の名前でしょ?」
「あは。大丈夫です。私は堺万知なんで。万を知るなんて、あり得ない名前ですから」
「意味があっていいじゃない。私なんて里山桜が語呂がいい、なんて理由からだからね」
「大丈夫ですって~」
堺さんはA4サイズのピンクの手帳を取りだし、そこに私の名前を書き込んだ。
「それで、なんで?」
「ああ。この間の打ち上げの時、名前を覚えるの得意って言ったじゃないですか~。だけど、よく考えたら、下の名前を知ってる人って少ないなぁと思いましてー」
「あー……」
そうだなぁ。
社会にでると、名前じゃなくて名字で呼ぶことが多いし、使わないと忘れ去られるよね。
「そーするとー? 山根さんはクラサカリオさんになるんですかね~?」
は?
「な、なんで倉坂さん?」
「え。付き合ってるんですよね?」
当然の様に言うな~!!!!