ふわふわ。
「ど、どーして私は捕まるのでしょう」
咲良さんと倉坂さんは、捕まえた私の腕を見て、それからお互いを見て、それから私を見る。
「だって、まだ半分も食べてないし、飲んでない。言っておくけど、うちのダーリンの作品残すなんて言語道断」
ああ、そういえば、咲良さんの彼氏さんて大木さんだった。
ピザ食べやすいし、美味しいし、残すのはよくないね。
それに、咲良さんて普段から残すの嫌いだし、とてもよく解る。
解らないのは……
持つ場所を腕から手首に移動して、それから指を絡ませて、にぎにぎし始めた倉坂さん。
「あ、あの……」
「山根さん、いつも逃げますから。何となく、今は捕まえた方が良いように判断しました」
「に、逃げてません。用事を思い出しました!」
じっと二人に見つめられ、それから咲良さんは笑って手を離してくれる。
それからニヤニヤし始めた。
「目が泳いでるよ。山根っち」
「泳いでません!」
「何だか可愛いですね?」
「か、かわ……」
小首を傾げて、微かに身体を寄せてくる倉坂さん。
何だか、目がとっても嬉しそう。
「何か言いたい事がありますか?」
「ないです!」
「そうですか? では、何を考えていたんですか?」
「何も考えてません!」
「そうは見えませんが。顔が真っ赤ですよ?」
「…………っ」
意地悪い。
絶対に意地が悪い。
わかってますよ。
さっきから顔は熱いし、身体も熱いし、きっとそうだろうなぁ……って、自分でも解りますよ。
だからって、言わなくてもいいじゃない?
見て見ぬふりしてくれてもいいじゃない?