ふわふわ。
何だか、解らないけれどデートがしたかったらしい。
まぁ、別に良いけれど。
「この間の仕切り直しをしようかと思いまして」
「仕切り直し?」
「バースデープレゼントが、あれはないと助言されまして」
ああ、タコわさび。
美味しかったけれど。
「印象に残るプレゼントでした」
「いえ。どうせならば、形に残るものにしました」
差し出されたのは、銀色の包装紙に包まれた長細い箱。
なんか……
「う、うけとれ……」
「返品不可です」
「ありがとうございます……」
受け取って、楽しそうな目のままの無表情を見る。
「見てもいいですか?」
「出来ればつけてください」
カサコソなる包装紙を開いて、出てきた箱は青のベルベット。
開いてみると、小さな石のチャームがついた、シルバーチェーンのネックレス。
こ、これ……
「ブランド物じゃないですか!」
「ブランド品に怒る女性は初めて視ました」
「だ、だって、まだ……」
言いかけて、口を閉じた。
それは決定的過ぎる。
その言葉は、言っちゃいけない気がする。
だけど、何を濁したかさっしたのか、
「そうですね。山根さんは“まだ”俺の彼女ではありません」
「…………」
「でも、いいじゃないですか。山根さんは、俺が君を好きな事を知っているのですし、彼女に贈るようなプレゼントをしても問題はありません」
いや、なんか、問題はあるような気がしてきてならないのですが。
何だか納得いかないような、いくような。
「食事にしましょう。何にしますか?」
何事も無かったような倉坂さんにメニューを差し出され、受けとる。
何だか、うやむやにされた気がする。