ふわふわ。
それでも和やかに会話をしながら食事は進み、途中、大木さんが出てきてワインを薦められるままボトルを空けて、それから店を出た。
「ご馳走さま、です」
「はい。本当にお酒強いですね」
「はぁ。酒豪と言う訳でもないんですけど」
コートのボタンを綴じながら、白い息に気がついた。
「今夜は冷えますね」
「暖めましょうか?」
コートを片手にかけたまま、両手を広げる倉坂さんを見上げ、首を傾げた。
「倉坂さん」
「はい?」
「その……色々、いいんですか?」
「質問の意図が読みにくいですが」
コートを着ながら倉坂さんも首を傾げ、それから何かに納得したように頷いてから私を見た。
「山根さん、これまでお付き合いした男性は何人ですか?」
「は?」
何をイキナリ?
いや、私も唐突だったかも知れないけれど。
「居なかった……訳はないと思いますが、そんなに多くはないでしょう?」
「え。いや、あの」
「以前、作戦変更したと申し上げた記憶があるのですが……」
何となく記憶にあります。
「少しは意識されている様なので、良いと言えば良いのですが……」
ひょいと腰を落としてきて、視線を合わせると、微かに指先で頬に触れられた。
無表情の中には楽しそうな視線。
その視線がちょっとだけ驚いて、それから嬉しそうに細められ……
目を瞑ると、冷たい感触が唇に重なる。
重なって……
ぐっと腰を引き寄せられると同時に、舌先が割り込んでくる。
「………っ」
少しだけ身動ぎしたら、そっと離れていく暖かさ。
押さえ込まれるように、引き寄せられた身体。
暖かさは心地いい。
いいけれど。
「……駄目ですか?」
「だ、だだ、駄目……っ」
「怯えさせましたか?」
「い、いいえ」
慌てて首を振ると、抱きしめられながらポンポンと頭を叩かれた。
「……解りました」
「わか……?」
「今は」
やっぱり、狙われている気がする。