ふわふわ。
飲み会にて


「あんたたち。雰囲気変わった?」

咲良さんの一言で、倉坂さんがウーロン茶を飲みながら私を見て止まる。

雰囲気……と、言うよりも、若干?
立ち位置が変わった?

キスは……したかな。

それから、よくご飯を食べに行くようになった?

決定的なことはないまま、曖昧な感じで……。

「変わったわよ。だって、倉坂が仕事を割り振りして残業減らしてるし、牧野さんが事務回してるから、山根っちの残業も減ったし。ウチの後輩達が騒いでる」

いや。それはいい事でしょう。

「後輩……と、言うとアレでしょうか? よく、山根さんに話しかけていた今村君ですか? それとも長峰君ですか?」

倉坂さんが身を乗り出し、咲良さんは眉をしかめる。

「あんたはストーカーか。よく見てるのね」

「それ程でもありません。彼らはあから様でしたから」

「本人に通じなきゃ意味ないけどね~」

そこで、どうして私を見るのでしょうか。

と、言うか……

「そこの3人。ハキハキとプライベートしてるんじゃないわよ」

向こう側にはプロジェクトの成功に盛り上がる会社のメンバーが見えた。

しらっと日本酒片手の牧野さん。

その隣に、何故かちょこんと座っている堺さん。

飲み会に倉坂さんがいると、近づいてくる人は限られるみたい。

そうだよね。
何を話しても良いか、悩む人はそうそういないし。

私も最初のうちは考えたけれど、倉坂さんて結構下らない話にもノってくれる。
無表情は相変わらずだけれど。

「何よ。もうくっついたの? 倉坂君」

お銚子を空ける牧野さんに、微かに倉坂さんが引いたのが解る。

……そうだよね。
私も新卒の頃はびっくりした。



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