ふわふわ。
「それで? 寿退社するの? 私みたいに続けるの?」
「話が飛躍し過ぎです、牧野さん」
さすがの倉坂さんも呆れたような視線で牧野さんを見て、それから私を振り返る。
寿退社とか……は、そんな話どころか、曖昧な感じですよね~?
「そう? 視線だけで会話するようなら、話は早いと思うんだけれど」
「……そうみえますか?」
「見えるわね。あんたたちがファイルを無言でやり取りしてる姿は怖くすらあるわ」
「指示は牧野さんにお願いしてると思うのですが」
「直接的な指示は私がしているけれど、それ以外にも二人でやり取りしてるじゃないの」
「ああ。補足でファイル探してくれている件なら、そこは山根さんの気遣いというものでしょう」
そういえば、前々から思っていたのですが。
「牧野さんて、倉坂さんと仲が良いですよね」
「あらぁ。気になる?」
だって、倉坂さんと咲良さんは同期だし、咲良さんは倉坂さんの友達と付き合っている訳で仲がよくなるのは解る。
だけど、倉坂さんと牧野さんは同期でもないし、企画と事務とは接点はあっても……さ。
もさもさとサラダを食べていたら、視界にひょいと倉坂さんが入ってきた。
「……どうして楽しそうな顔をしているんですか」
「楽しみです」
「何がです」
「答えが」
ただ気になっただけで、答えもなにも……
ただ気になったから……
どうして気になった……?
「わ、わたし、お酌してきま……っ」
「今で無くてもいいでしょう」
テーブルの上に重なった倉坂さんの手に視線を落とし、ニヤニヤ笑いの咲良さんと堺さんを見て、それからお銚子のお代わりを頼んでいる牧野さんを見る。
……解りましたよ。
ストンと座り直すと咲良さんに爆笑された。